営業時代の話⑥〜ハラスメントと愛情の巻

これまでの話はこちらから☟

営業時代の話①〜毎日の日経新聞の巻

営業時代の話②〜「時間の価値」は違うの巻

営業時代の話③〜勢いは大事の巻

営業時代の話④〜初めての上司の話

営業時代の話⑤〜飛んだ同期の巻

妖怪ドSじじい

さて、このシリーズも大詰めまで

やってきた感満載であるが

(前も言った気がするが)

今回は私がいた会社の、「妖怪」こと

部長の話をメインに進めていこうと思うぞよ。

大体どこの会社でも

『異常に頭が切れる人間』というのは存在していて、

大体そういう人間はシュッと出世しているので、

役職者であることが多い。

今回ネタにする妖怪ことO部長も例にもれず、

キレッキレの頭脳で、

話もめちゃくちゃ面白い人だった。

そして誰よりもシビアな目線で物事を見ていた。

新卒たちにとっては、本部長とはまた別の

怖さがある、おそれられた人であった。

(本部長は竹刀を振り回してブチ切れる関西人)

この部長の面白いところは、

さながら昔話の妖怪のように、

「面白い人間が大好き」

でありつつも、

  

営業部の部長として

「数字を上げる」ことに特化し、

時として山里におりて怖がられる自分を見て

傷つく鬼のように

「人間らしい心」を

本当にたまーにだが、思い出すところであった。

まあ要は妖怪であった。

「面白い」か「金になる」か

不動産業界において、

営業として生き残るために最も

「得なスキル」が2つある。

それは、

「面白いこと」と「数字を持っている」

この2タイプである。

どこの会社にも必ずいるはずだ。

「あの人なんで生きてるんだろうってぐらい

 愛想ないけど、成績だけはトップだよな」

というやつと、

「あの人すぐ調子乗るし、すぐいじられるけど

 契約全く出ないよな。なんでここ居られるんだろう」

というタイプが。

社内営業はいかなる会社でも重要だが、

『最重要』ではない。

営業にとって『最重要』なのは、

誰かの権力やコネありきでつかんだ数字ではなく、

自分の足で歩き回ったエリアの知識と、

お客さんを落とす舌である。

そして、それを継続するための工夫だ。

だけど、それを獲得するために

頑張り続ける姿勢があって、

更に面白キャラで上司に好かれれば、

結果がなかなか出なくても、今の世の中では

クビになることはなく会社に在籍し続ける

ということは可能である。

そして、そういう皆に好かれる奴は、

何とかして数字を出させてやろうという

上司の思いとかも入るので、

結果的にちゃんと数字が出せた、

という終わりよければすべて何某パターンで

生き残ることが可能なのである。

対人スキルだけで「勝つ」ことは

難しくても、

「死なずに何とか生き残る」ことは

可能だ。そういう人間は結果的に

その会社に長くいて、いろんな面で

貢献していくことになるので、

後々昇給したときに、

同じように結果が出ず、

苦しんでいる後輩たちを助ける役にも

なることができる。

要は、営業としてのありかたは

確かに永遠に「プレイヤー」だが、

「育ってきた人間」というのは

会社的には「人材育成」という

すごく大事な仕事を担ってくれる。

つまり営業の枠を超えれば、

存在価値が高くなることもある、

ということだ。

妖怪こと部長は、自分がプレイヤー時代は

めちゃくちゃできる人だったので、

この限りではなかった。

だけども、いざ上席となったらできない奴を見捨てる、

というタイプでもなかった。

今から考えると、根本にある思考は

攻めの姿勢と言いつつも中庸の感覚を忘れない、

ある程度まともな人だったように思う。

トップ営業マンとは

さて、次は先ほどのタイプとは対照的、

上記の「成績だけはトップ」

というプレイヤー特化の人たちの話だ。

「めちゃくちゃ売っている営業マン」は、

大抵が傲慢だ。

だけど、そいつらは自分が傲慢なのを

ちゃんと知っている。

普通の人間は傲慢な営業を嫌いがちだが、

彼らは実はすごいことをやっていると

皆さんは知っているだろうか?笑

例えばだが、一時期波に乗るとか、

運が重なったりして、

「調子に乗る」のは、正直な話

一度数字を上げれば誰でもできることだ。

だが「傲慢になる」のは

並大抵なことでは無理だ。

なぜかというと、

傲慢になるためには

「数字を上げ続けた過去」という積み上げが

少なからず必要だからである。

彼らは基本的に、大きい武器を1つ以上持っている。

その上で、確保している生け簀がある。

それはある会社では「顧客リスト」だったり、

「見込み客リスト」だったり、

「知り合いの多さ」だったりする。

生け簀がない人間は、

いきなり小舟で大海原に漕ぎ出して、

ひたすら釣りをし続ける。

大抵は溺れて死んでいくか、

最初は釣れていても、

釣れなくなる時期に突入して衰弱していく。

売れる人間は、最初にやり方を考える。

少ない努力で利益を出すための

「やり方」を作るために時間を使う。

もう小舟で漕ぎ出している周りの人間から

どれだけ遅いと馬鹿にされようとも、

全く気にしない。

彼らは「やり方」という名の武器や、

自分がコンスタントに釣れる生け簀を確保

するための初期努力を惜しまない。

更に生け簀を確保したら、

その中でどれだけ食っていけるかの

見通しと、時期的な目標、

新しい生け簀や別の方法を模索する目線、

ひいては身を引く時期まで大抵計算している。

「頭がいい」ではなくて、「ずる賢い」。

という方が正しい表現なように思う。

トップ営業マンの怖いところは、

その一定の「やり方」があらゆる業界で通用する

と知っていることだろうか。

食いっぱぐれはない、と相場が決まっていれば

傲慢にもなれる。

会社もコンスタントに数字が出せる人間を

そうそう野放しにはしない。

必然的に社内での発言力も高くなっていき、

役職にも付きやすくなる。

営業力をつけるということは、

会社と対等か、それ以上の立場でやりあえる、

交渉できるようになるということなのである。

フードハラスメント

さて、大分話がずれてしまったが、

部長の話に戻るぞよ。

部長は前回の飛んだ同期の話でも

あったように、

(参照※営業時代の話⑤〜飛んだ同期の巻)

部下や後輩をいじって遊ぶのが

大大大好きな人であった。

確かに、新人や勢いのあるやつが、

捨て身で笑いに走る面白さというものは

存在するが、それはある一定の貴族以上の

遊びである。もはや。笑

飛んだSという同期については、

前回も書いたが、今回は詳しくその悲劇を

書いていくぞ。

少しずつ暑くなってきた初夏のある日、

その月の契約者のみ集められる、

ご褒美の社長の焼肉会で、

同席した部長がカルビを焼きだし、

店員さんにライス大を頼みだしたことから

悲劇は始まった。

この時点で新卒メンバーには

大きな緊張感が走った。

店員さんに耳打ちをする上司ほど

恐ろしいものはない。

ライスが来てからの部長は、

ある程度想像した通りだった。

焼き終わったカルビを次々と

ライス(大)の上に乗せていき、

「ほい、S!作ってやったぞ!!」

とのありがたいお言葉と共にSの前に

カルビ丼をバーンと置いた。

Sはそこまでは想像通りだとでも言わんばかりに

喜んで食べていたのだが、

…部長が恐ろしいのはそこからだった。

少し食べるペースが落ちてきたSに対し、

「S、腹いっぱいで食いづらいんだろ?」

というありがたい観察とともに、

サンチュを差し出し、

「巻いて食うといけるぞ!」

と励ましの言葉を送り、

「確かにいけるっす!美味いです!」

と完全に油断してブヒブヒ食べるSを

ニコニコと見つめた後、

「そうだS、お茶漬けにしろよ!!」

と叫び、世紀の大発見をしたと言わんばかりに、

おもむろにマッコリの瓶を手に取った。

その瞬間社長も含め、

全ての人間の目線が部長の右手に

集まったことは言うまでもない。

わたしは恋をした瞬間のように、

部長の手先から目が離せなくなった。

瓶から一杯ずつ、まるで戦時中の

配給をする若い娘のように優しく、

ひしゃくでマッコリをすくっては

カルビ丼にかけ、楽し気に

すくってはカルビ丼にかけ、

掛け声をかけるなら、わんこそばの

「どんどん♪」「ちゃんちゃん♬」

という合いの手が脳内で入るぐらいの

にぎやかでメルヘンな世界観であった。

Sは一瞬思考停止した後、

出来上がって目の前に置かれた

マッコリ茶漬けを一口、

二口と恐る恐る口に運び入れた後、

(んおおえええええ)

という大きな嗚咽をサイレントで見せた。

声無しのほうが面白いってどゆこと?!

その笑いのスタイル、チャップリン以来じゃない?

どゆこと?!と私はこっそりとヒップホップを感じた。

ここまでは完全個室の某叙々苑

のなかでもさらに高いと言われる

ある店でお送りされた出来事である。

そのあとSは涙をこらえながらも

マッコリ丼を気合で食べ、

そして食べたものはすべてもれなく

帰りに生け垣というおおいなる大地に

帰っていった。

アフリカの子供たちが聞いたら

激怒してぶち殺しにくる勿体なさである。

私は私で毎日牛丼特盛を食べさせられ、

今よりだいぶ太っていたりした。

ほんと不動産屋は何かあると

連れだって良いメシを食べに行こうとしたり、

食で笑いを取ろうとする種族なので、

デブ必須なのである。

フォローもね

割とクソミソに書いてきたが、

この部長は笑いに関するときは

時としてハラスメントいじめっ子になるが、

仕事に対しては誰よりプロだった。

私も普通によくしてもらったり、

仲良くしてもらうこともたくさんあった。

一回会社においてある、BBQで余った酒を

〆期が終わってから皆で開けたことがある。

その夜、会社の1フロアがカオスになった。

トイレで泥酔するものや、

かくれんぼを始めるもの、

追いかけっこをはじめて足がもつれ

負傷するもの、多々であったが、

かくれんぼ中、べろべろになり、

私はなぜか冷凍食品の餃子の空き袋を

頭にかぶり、ブラインドの裏に隠れていた。

サイレントヒルのあの三角頭みたいな感じだ。

私は気配を殺すのがマジでプロなので、

誰にも気づかれず、楽しくなって

鼻歌を歌っていたが、

まさかの部長も気配の使い手だったらしく、

見つかってしまった。さすがである。

しかしバッ!!とブラインドを開けた瞬間

私がなぜか餃子の袋を

かぶっていることに意表を突かれたらしく、

部長は吹き出し、爆笑した。

その後部長はしばらく笑いが

止まらなくなってしまい、私は

(初めて部長をこんなに笑わせたかも)

と、笑わない少女を笑わせた妖怪のように

ほっこりした気持ちになったのをよく

覚えている。

そのあとも、

初めて契約をしたときなど、

「お前俺に運転させるのかよ!」

「免許持ってなくてすみません…」

と言いながらも運転してもらい、

はじめての金消契約に同行もしてもらい、

蕎麦屋で天ぷらを食べさせてもらったりした

のはいい思い出である。

交渉中や仕事中の数字の計算は多分、

スーパーコンピューターより

速いんじゃねえかと思うぐらい

鋭い人なのだが、

突拍子もない面白いことや

良いキャラにはめっぽう弱い人であった。

投資用の不動産業界で長く

役職者をしていると、おそらく

「ただ面白い」とか「勢いはある」という

まっすぐなキャラでいることは

できなくなってくるのだと思う。

ひねくれ要素や、いじわる要素もないと

刺激が無くてつまんないという方向に

向かってしまうのが悲しいところだ。

今は子供が生まれて妖怪から人間に

戻ってしまったらしい部長、

お幸せに、である。

終わり!!

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