公園はちびっこの聖地
前回登場した公園で、
例によってまた父と遊んでいたある日の話。
私の記憶のおぼろげな中では、
その公園には遊具がそんなに無かった。
砂場とジャングルジム程度のものはあった気がする。
夕方になり、5時になったのだろうか、
ジャングルジムに上って景色をふと眺めていた時、
たまたまお寺の鐘がゴーーーンと鳴った。
____子供には、自然と一体化する瞬間が
訪れることがある
ということをご存知だろうか。
子供が時として、ほんの一瞬、
ヒトや動物を越えた、
超自然的存在や物体になるという現象である。
大人になっても、人によっては稀に訪れることがあり、
また、動物もそういった現象にみまわれることがある。
「ジャック!!私飛んでるわ!!」
「それでも虎たちは
はやくはやく走り続け、
そのままとうとう溶けて
バターになってしまいました。」
などは最もポピュラーな例である。
また、大人達のそういった自然への
回帰願望のあらわれ、
特に風と一体化するという面において、
時代のふしぶしで
「風になりたい」や、「千の風になって」など、
生死に関わらず風と一体化したい、
という願望を歌った曲が大ヒットすることからも、
これははっきりとみることができる。
また、これはトトロを見ることができるのは子供だけ、
という超一般常識にも通づるところである。
おそらく、その瞬間の私もそうであった。
____私は、音になった。
鐘の音と共鳴したのだ。
まるで,そうすることが最初から遺伝子に
組み込まれていたかのように、
私は叫んでいた。
「ごーー―ーん!!」
と。
父はあっけにとられ、
その後死ぬほど腹を抱えて笑っていたと聞いたが、
その時の私は、
確かに、自然とひとつになっていた。
今度は父め、許さん、とは思わなかった。
父よ、お前も風になれ、そう思った。
そんなちびっこの頃の話。