営業時代の話④〜初めての上司の話

前回までのお話はこちら!

営業時代の話①〜毎日の日経新聞の巻

営業時代の話②〜「時間の価値」は違うの巻

営業時代の話③〜勢いは大事の巻

何事も初めての

さて、皆さんが最初に新卒で入った会社は

どんな会社だっただろうか?

転職が当たり前の世の中にはなってきたが、

もしかすると、今もまだ新卒入社から

同じ会社に勤め続けている人、

もしくは会社員は経ずに

フリーランズや起業などでずっと

やり続けている人もいるかもしれない。

会社員を経たことのない人はわからない

かもしれないが、バイトでもなんでも

「初めての上司」というものは

みなさん多分覚えているのではないだろうか?

そう、今回はまさに上司の話である。

特筆するべきなのは、

社会人になりたての当時の私にとってだけではなく、

当時のその上司にとっても、

私は「初めての部下」でもあった

ということかもしれない。

アポインターの苦悩

仮に上司の名前をMとしよう。

私は営業部に配属された後、

Mライン(組のようなもの)に割り当てられ、

同じく別の新卒と、既に昇進している先輩

と共に4人のチームで仕事を始めたわけである。

私の一番メインの仕事は、

電話を掛けまくり、お客さんとのアポイントを

取る、という事であった。

詳しいことは前回までの話や

別のところで紹介しているのだが、

(参照※給与明細で私は救われなかったという話

正直、何でもいいからお客さんと会う約束を

取り付けて来ればいい、というのが

最低ラインとしてあった。

そこからお金の話をするのは

上司の役目で、申込みを取るのも

契約を取るのも、もちろん上司の役目であった。

ただ、もちろん電話の段階で

お客さんのマインドをきちんとつかんでいれば、

会った段階で相手と一生懸命戦う必要がなくなるので、

必ず「クロージング」をかけろとよく言われていた。

(「薄いアポを取るな」ともいう)

アポイントに同行してもらいながら、

どういう交渉をするのか、

聞きながら勉強する、というのも私たち新人の

仕事であった。

さて、話は戻るが、私は俗に言う

「アポインター」であった。

私は相手を楽しませたり、

突拍子もない話をすることも得意だったし、

そこからうって変わってまじめな話を

わりかし建設的にする、ということも

得意な方だった。

ただ、私の致命的な欠陥は、

「メンタルが弱い」ということであった。

根っこの部分で気が弱いのである。

なので、相手にどうしても合わせてしまったり、

相手の感情を気にしすぎてしまう部分が

めちゃくちゃネックになっていた。

なので、上司にとってはかわいそうなことに、

「クロージングのかかっていないアポ」を

やたらとって来る、

無駄足の多いアポをとる部下が初めての部下に

なってしまった、ということである。

初めて部下を持った時の最初の壁としては

わりかしハードルが高く、

超つらかっただろうなと今になって思う。

「頑張れる自分」に酔う時期

さて、不動産業界の雰囲気はどんな感じなのか

皆さんはご存じだろうか。

介護や医療などの「きつさ」は

おそらく想像がつくだろう。

「実はきついんだよ」と言うと

「そうなんだ!知らなかったー!」

と大抵は驚かれるぐらいには

体育会系だったり、仕事内容がきつい

という仕事の一つである。

ちなみに証券会社と不動産の営業は似たような

弱肉強食具合だ。

そして同じくノリや勢いがかなり重要な部分を占める。

大学でいうとテニサーとか飲みサーのアレである。

ちなみに保険会社と商社も同じノリが多い。

(ストライプのスーツで2ブロックだったら大抵そう)

そして、不動産会社⇆保険会社⇆証券会社という

3つの業界を相互に行き交う転職は

めっちゃくちゃ多い。

まあ全部金に大きく関わる業界なので、

無理もないが。

私は、一番最初の会社がきついことに関しては、

むしろいいことだと思っていたので、

(これよりきつい経験はない、というのは

若いうちにやっておいたほうがいいなと思ったのだ)

例にならってドギツイ体育会系の

会社の「休まず働けばその分結果が出る」

という、安易だがある面正しい考えに基づき、

上司に「毎日電話させてください!」

と頼んだ。(休み返上しますってことね)

まあそんなピュアな理由だけでなく、

それだけやる気があるよ、というアピール、

これで結果が出てなくても

頑張ってんだから怒んなよ、という牽制、

そして上司的にはまあ

「うちの部下はこれだけやる気を見せています

(そう指導しているのは俺です)」

という部長に対するいいアピールにしてくれや、

という思惑があった。

その時点までで私は契約を出せていなかったので、

単純に休み無く頑張ったらその分結果は

果たして出るのだろうか?

という実験的な試みでもあった。

休日にオフィスを開けるのは部長の許可がいる。

もちろん一人で来ることは新卒には

許されていないので、私は上司に休みもきてもらって

電話を打つ、という自分的大プロジェクトに

取り掛かったのである。

休みの日に会社に来る、

ということは意外と私は嫌いではなかった。

いつもの張り詰めた緊張感がない会社で、

スーツも着ないでラフな格好で電話ができる。

同じ空間で気分転換ができるという不思議な

技は多分ブラック企業に勤めたことがある人間

でないとわからない感覚かもしれない。笑

数字が出なくて、

追い詰められているはずなのに、

「休みなし」という免罪符を与えられた

盲目の信者のように、

当時の私はなぜか周りに優越感を

抱いていたことを覚えている。

馬鹿極まりない。笑

これは本当に日本特有のクソみたいな

文化かもしれない。

皆頑張っているのだが、

無理して頑張っている人間をたたえ崇め、

一番結果が出ている人間は基本運任せ、

という風潮である。

人間性ややっていることの良しあしに関わらず、

営業をやる限りは、結果を出す人間が

すべてである。誰が何と言おうと。

まあそんなことを知る由もなく、

当時の私は頑張れる自分に酔いまくっていた。

自分の上司と共に。

働きアリとワーカホリック

テスラモーターズのCEO、

イーロンマスクの、ある言葉をご存じだろうか。

「成果を出したいのであれば、

 週100時間死に物狂いで働くべきだ」

この言葉である。

(映画アイアンマン

 主人公のモデルでもアルネ)

面白い記事があったのでリンクを貼っておくが、

成功するために週100時間働くとはどういうことか

彼は一時期の酷い働きアリ状態を抜けて、

今は普通のワーカホリックになったらしい。笑

日本人の昔からの働きアリ体質には一見

とってもなじむ記事のようではある。

彼にも昔、会社に所属して働いていた時期、

私のようにやみくもに働きまくっていた

時期があった。

その時のことは「努力する方向を間違えていた」

と語っている。そしてその時の自分は

「高揚していた」とも。

そういう状態を「酔う」という。

感覚的にはランナーズハイと似ている。

これに信念や信仰心が加わると

山にこもって修行する修験者になる。

ただ、これはよくある天才タイプが

寝食を忘れ研究などに没頭する、

という描写のあれとは全く違う。

没頭する人間には

「自分は努力している」という意識はない。

集中しすぎて眠気や食欲を超えているだけ

である。なので没頭から覚めてふと気づいたとき、

お腹すいた!とか眠い!となって

いっぱい食べたり寝たりする。

アラバスタ編でクロコダイルを倒した後の

ルフィと言えばわかりやすいだろうか?笑

そして没頭する脳内には麻薬にも似た

「楽しさ」が存在するのか、

またスイッチが入れば再び没頭していくのである。

「酔う」働きアリたちは、これとは全く逆だ。

自分で苦行を行っているという

自己認識が強くあり、それを逆に利用して

自分を律することで不思議な快感を

生み出すのである。

なぜなら苦行というのは毎日続けないと

いけないものだからである。さながら

「苦しいけど、女王アリ様のため…!」

と盲目に使える働きアリのように。

端的に言えばドMのスキルだ。

イーロンマスクはこのスキルを

働きアリ時代に身につけた。

しかし、ただの働きアリでは稼げない。

そして、これからの彼のやりたいこと

と照らし合わせたとき、

「普通の仕事量じゃこの夢は叶えられない」

と考えるまでもなく分かったのだろう。

彼が本当に実現したいことから逆算して、

身体を壊さないギリギリのラインで

全力で働く、という現在の形にシフトした。

これはあくまで

「楽しいことやプライベートと仕事は別」

という大多数の人間の観点に基づいた

「ワーカホリック」だ。

彼の場合はワーカホリックではない。

「誰かの計画や会社のために身を粉にする」

という働きアリではなく、

「ビジョン」とか「計画」とか「逆算」

に基づいた、楽しいことや娯楽や趣味が

全部仕事になっちまった人の

シンプルな行動計画なのである。

日本人的な「働きアリ」との差は

お分かりいただけただろうか?笑

契約が出ない

さて、働きアリも板についてきて2か月ほど

たったころ、私の心にはある感情が

生まれ始めた。

そう、それは「焦り」である。

毎日毎日、本当に休みなく出社した

というのに、ちっとも結果が出なかったのである。

2か月間黙って応援してくれていた部長が、

ちょっとストップしてみるか、

と言ったのはその「焦り」

上司との衝突を生むようになって

しばらくしてからだった。

「頑張っても成果が出ない」

→「頑張るのをやめる」

→「当たり前だが成果は出ない」

→「頑張りが足りなかった?」

→「また頑張る」

という最悪のスパイラルに陥っていた。

努力の形が違うのか?

いや、そもそも努力って何?

息抜きも大事とかいうけど息抜きとは?

みたいな、完全に努力のゲシュタルト崩壊を

起こしていた。笑

そこからの記憶はあまり濃くは

残っていない。

惰性で仕事をしていたらたまたま

契約が出て、ようやく実ったな!

よかったなあー!

という周りからの言葉を素直に受け取ることは

1%も無かったことだけははっきりと

覚えている。笑

契約が出たのは今までの努力の分、

当然だと思える道すじはうっすらとも

つながっていなかったからだ。

こんなにわからない仕事とは

とても付き合ってはいけない、

近いうちにやめよう、

そういう風に思って、その時から

カウントダウンが始まった。

恋愛感情?

だが、私はなかなか会社を辞められなかった。

契約が出てからも上司と何回も

衝突を繰り返していた。

私はずっと彼のラインに所属していたが、

彼のことをすごいわあーと尊敬したり、

この人について行きたい、と思ったことは

正直一度もなかった。笑

だけど、一緒にいて別に嫌ではないし、

面白いなあ、と思うこともあった。

そして、何よりも、自分がつらい思いを

しているところをずっと見られてきて、

そして自分も上司が

「部下のアポイント」に対して苦戦してきた

道のりを見てきてしまっている、という

情にも似た想いが邪魔をしていたように思う。

好きだなあとか、ドキドキするという

気持ちは全くないのだが、

なんかほっとけないあの感覚である。

ちなみにその上司に本気でほめてもらったことや、

評価されたと思ったことはないが、

別の同期が同じラインに入ってきた時、

「こいつはできないなりにデータ出して

 ちゃんと分厚い書類出してくるんだぞ!」

とその同期が怒られているのを見て、

自分の時は

「こんなに分厚い書類読む気失せるだろうが!

 要点だけでいいんだよ!」

と怒られたから、

基本上司は誉めることをしないんだなあ、

なんだあこいつ恥ずかしがりかよ、

とぼんやり思ったのを覚えている。笑

その上司と最後までうまくいかなかったのは、

「腹を割れなかったこと」

これにつきる。

私は最後まで彼の腹の中を

覗き見ることもできなかった。

だからすべて推測と、

その時その時の気分のやりとりでしか

コミュニケーションが取れなかった。

たとえるならば、男は

「付き合ってるよ」というものの

セフレなのか恋人なのかわからず、

もやもやしている女子のような、

あの宙ぶらりんの感覚である。笑

言葉はあっても中身が存在しない

あの感覚。

私は彼に恋愛感情を抱くことはなかったが、

好きになろうと必死に努力する過程で

あの現象に心から共感した。

新入社員が会社に入りたての頃、

だいたい2個上とか3個上の先輩とか

上司とかにうっすら恋をしてしまう

あの現象である。笑

単純な尊敬や恋心とは別に

つらい仕事やしんどい状況で

ストレス、負荷がかかっている時、

女はもしかしたら恋愛感情という全く関係ない

引き出しを引っ張ってくることで、

ストレスのはけ口にしているんじゃないかと思う。

「現実」を使って「現実逃避」をする、

というたまげた高等技術である。笑

死んだ魚の目

さて、そんななあなあの状況も長くは続かず、

私は結局その上司のラインから外れることになった。

新しい上司は丁寧にケアをしてくれたが、

俯瞰してみても、近づいてみても、

どう見ても、もうこの仕事を続けるのは無理だった。

人は本質から逃げられない。

私は生きながらにして、

死んだ魚の目をゲットするまでに至った。

その時はゲームオブスローンズが流行っていたが、

ウォーキングデッド全盛期だったらマジで

くだらないトークも笑えない代物になっていただろう。

私こそがウォーキングデッドだったからな。笑

「自分はこれ、やりたくないんだ」

ということを自分の身体に教えてもらうのは

それからそう遠くはない時期であった。

人事の担当者と退社の手続きを済ませた後、

「スッキリした顔しやがって!」

と上司に言われたことを覚えている。

めちゃくちゃ暗い顔でポーカーフェイス

ぶっこいてたつもりだったのだが、

ばれてしまったらしい。

こんな風に振り返ることができるようになったのは

最近のことである。

さて、次は飛んだ同期の話をするよ!!笑

続く!!

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