大悪口
さて、今回はただの悪口である。
私は学歴・国籍・人種・性別で人を差別しないが、
「こういうタイプはこういう傾向」
という独断と偏見に基づいた考えは
自分の統計からはっきりと断言することがある。
今回はまさにそれである。言い訳はしない。
『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。
私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、
他人の経験から学ぶのを好む。』
とはビスマルク大先生のお言葉であるが、
人生とは愚者の道を行くことではないだろうか。
皆さんは私のようにならぬよう…
あな悲しや…
さて、毎年だんだん冬に近づいてきて、
まだ12月にもなっていないのに、
既にクリスマスソングを流したりしている
店などに入ると、じゃあこの11月後半から
12月前半の存在意義はなんなんだ、
準備の期間かよ、11月のアイデンティティとは
って感じでイライラするのであるが、
まあそれも私にクリスマスに
よくない思い出があるからであろう。笑
特に電通の人間の悪口をぶちかますので、
電通が大好きな人間や、
広告代理店を悪く言うな!!
合コンだーい好き!!
という人間はそっと画面をとじてほしい。
君の名は
今回ネタにする電通マンの特徴なのであるが、
不思議なことに、私は彼の名前が全く
思い出せない。ほんとなんだったっけ。
すごい頑張っても、ラインで検索をかけても
全然思い出せない。駄目だった。
でも何となく彼の顔は覚えているし、
彼との出会いも覚えているし、
彼の家の雰囲気も、
彼と一緒に観た映画すら覚えている。
というのも、彼と私とは、
私のそれまでの人生の中では
なかなかイレギュラーな出会い方
をしたからなのである。
さて、昔も昔、
不動産の営業で毎日ヒーヒー言っていた頃、
私は新宿の近くに住んでいたのであるが、
職場からの帰り道に、毎日使う
都営大江戸線への乗り換えホームで彼に
スルッとナンパされたのである。
私はあまり日常生活、平日の時間帯ではモテない。
仕事モードの時は大抵目の下にデカいクマをつくり、
電車の中で窓に映る顔を何度見ても
顔はやつれて、ものすごい不機嫌そうにしていたり、
はたまたしんどそうにしていたり、
ハッピーオーラというよりも負のオーラを
巻き散らかしている。
(もし私が男だったら、仕事着だけど
女の子らしさを感じる服装とか、
ちゃんとセットした髪型で
通りすがりにいい匂いがするような
ハッピーかましてるOLに声をかける。)
私みたいなのはちょっとシケすぎ、
ちょっとやさぐれすぎなのである。
ちなみにこれは今でも割と同じである。
ただ、ちゃんとお洒落をして、
遊びに出かける時は
お世辞にみても別人だというぐらいモードを変える。
これは私の性質上しょうがない現象なのだ。
オンとオフの切り替えは自然になってしまうのである。
しかし、この時はまだ若かったからというよりかは、
多分彼は視力が悪かったのであろう、
「あのー、乗り換え口ってどっちですか?」
というベタな質問に、
仕事モードでノーガードだった私は
律儀に答えたのである。
彼は一人で、よく渋谷のなんとか坂や
駅周辺にウロウロしている、
ナンパ慣れしている子たちとは
大きくかけ離れたタイプの人であった。
余談であるが、
「誰でもいいから声をかける」という
行動に対して、女は異常に鼻が効く。
そしてそれをやられたとわかった瞬間、
内心ぶち殺すぞと思いながら
にこやか、もしくは完全に無視する。
「誰でもいい」けど「声をかけられた」
というのは、女にとっては
「自分の価値を落とす」という
屈辱的な扱いを受けることだからだ。
世のナンパ師はこの心理を
どれぐらい理解しているだろうか。笑
ご存じの通り、
当時でも私は既にクラブ店員を6年経て、
そんなことはとっくに通り過ぎていた身
であったので、彼がどうやら
「渋谷のナンパ師」たちとは違うな…?
ということを言葉一つ二つかわしただけだが、
なんとなく察知していた。
そこで興味がわいたのである。
「こいつはどんなタイプなんだ?
今までの統計にはいないタイプだ」
という風に。笑
「クラブより合コン」
なタイプとは
タイトルにしてしまったが、
後からわかったことである。
彼はいわゆる
「クラブより合コン制覇」タイプの
進化版みたいな男であった。
こういうタイプは、
見た目に対する絶対的な自信、
どこにでも出て行って行動する勇気は無い。
クラブでは、見た目が絶対正義であり、
かつ「主体的な行動」をしないことには
1つも始まらないが、
合コンでは
「あらかじめ女の子と話す場所が提供される」
「自分から話しかけなくてもOK」
「相手に断られるというリスクがない」
という逃げ放題月額プランのクソ携帯会社みたいな
甘っちょろい思いができるのである。
その代わり、こういうタイプは
社会的なステイタスや価値観、
自己暗示を作り上げて
なけなしの自信を構築している。
たとえば
「大会社に勤めている」
「収入が高い」
「彼女が途切れたことがない」
「バーをやっている知り合いが多い」
「自分では割と顔がかっこいいと思っている」
など。
喧嘩を売るようで大変申し訳ないのだが、
言っとくが、裸一貫の勝負の世界では
そんなものは
なんの自慢にもならん。
女を落とす男というのは、
バーカンの前で立っているだけ、
ただタバコを吸っているだけで
女が寄ってくるもんなのである。
そして、本人の意思のあるないに関わらず、
クラブに行こうと、渋谷を歩こうと、
田舎に行こうと都市に行こうと、
はたまた仕事中でもオフの時でも関係なく、
環境を選ばす、
その場を恋愛の土俵にする能力がある
ということなのである。
よく合コン覇者タイプが
「俺クラブとかチャラいの苦手だわ」
「俺常に彼女いるからそういうとこ行かないww」
とかなんとか言い訳しているが、
悲しい事実をお伝えするぞ。
「彼女が途切れない」ことに価値はない。
「クソ美人な彼女がいる」ことに価値がある。
お前らはそもそも勝負の土俵に乗れていない。
そしてお前らが必死で使いこなしていると思っている
武器、それらはすべて後天的なものだ。
それらの武器は、
獲物にフックがかかった状態でないと
うまく機能しない。
今やモテの王道ともいえる、
「お笑い芸人」や「面白い人」
でさえ、まず喋っているところを
相手に聞いてもらう時間がないと勝負もできない。
男性にとって、
先天的にして最強の武器というのは、
紛れもなく、
「顔」「体格」「雰囲気」
これなのである。
「金」「喋り」「性格」「頭脳」
も大事な要素ではあるが、
初対面のまず第1段階において
武器にはならない。
第2段階で大きな武器になる。
恋愛の土俵における最大の武器は
「第一印象」である。
要は一目惚れするかどうかだ。
見た瞬間に攻撃を受ける。
メデューサのごとくKO勝ちする。
ヒエラルキーのトップは
これになってしまうのである。
もちろん、人間関係を築いていく上で、
時間をかけるほどルックスは少なからず
軽視されていく。
中身があるならモテとか関係なく
ちゃんとした関係は作れる。
ただ、もし一度でも「モテ」という
サバンナの弱肉強食の世界に降り立つならば、
この構図は絶対に理解しないといけない。
合コンの覇者であるそいつも、
元はこのタイプであった。
ただ、2つ評価できたのは、
そいつは「引き」を理解していたこと、
土俵には乗れなくても、
「釣り」をするスキルは知っていたことだ。
興味で進む道
私は彼に乗り換え口を聞かれた後、
そのあといつまでたっても
私の目の前からいなくならず、
なんか質問しようとしてきたのを見て、
(ナンパか…!こいつ頭いいなあ)と思った。
見た目はキンコン西野とクリーピーナッツの
R指定を足して割ったような顔だったが、
それまで女の子を探すそぶりもなく、
駅のホームには人もまばらだった。
「声をかけるつもりじゃなかったけど
タイプだったんで思い切って声をかけました」
と言える状況をうまく使い、
「次の電車が来るまでホームからは立ち去れない」
というこちらの不利さも理解しているとしたら
こんなおいしい環境は逃さないだろう。
そして、そいつは「引き」をうまく使っていた。
電通というカードがあれば、
人は初期段階で名刺などを見せて
相手の警戒を解くのに使いそうなものであるが、
そいつは会社については触れず、
「ナンパだと思うよね、ごめんなさい」
「今を逃したらもう会えないと思って」
という素直さを押し出した。
そして、
「もしよかったら、チャンスをくれないか」
という低姿勢で連絡先をお願いしてきた。
そして、どうしようか迷うこちらの顔色を
伺いながら、じりじりと近づく電車の到着に
合わせて、低姿勢の会話を続ける。
そしてもう電車きちゃう!という焦りを見せ、
その時にはそいつのやり方に
興味を持ってしまった私からラインをゲットして、
私の乗った電車を見送ったのである。
私は詐欺師がマルチの勧誘にあえて
引っかかったふりをして、手法を学ぶみたいな
感覚を持ちつつ、純粋にそいつに対する
興味も沸いていたので、そこから
ラインでのやり取りを始めた。
この人まあまあ頭いいな、と思う上手い
切り返しと、普通でつまんねえなと思う切り返しが
半々の、発展途上感が少し新鮮だった気がする。
彼はいわゆる、
「クラブにはあまり行かないけど、
DJを勉強している」
というDJちょっとだけかじり虫だった。
要は趣味でDJをやっていて、
「ビルボードのTOP40の同じBPMの曲を繋げられる」
というTHEなタイプだった。
音楽がすごく好きという印象は受けなかった。
流行った曲や、いいよね!という曲は
たくさん知っていても、
曲を聴いて泣いたことはねえだろうなあ、
という印象であった。まあ今考えると、
さも電通ありなんという感じだ(偏見)。
私は当時、クラブはたくさん知っているけれど、
クラブ以外の飲み屋やいいお店は
知らなかったので、利害が一致すりゃいいか、
ということで、またそいつに会うことにした。
確か渋谷の日本酒バーみたいなとこに
連れて行ってくれた。
その日はそいつが電通だという話題と、
「別にSEXする事しか考えてない訳じゃない」
という遠回しな振りを肴に飲んだ気がする。
そして私はそれで、もし家に行って
やっぱりしたいなんて言ったら、
そんな奴は漢と書いて男じゃない、
証明しろとけしかけた。笑
まあ内心は、実在する電通マンは
いいマンションに住んでいるのか?
ということが知りたかったのであるが、
普通のぼろいアパートだった。私は内心
AVの企画ものの逆ナンみたいなノリで
そいつの家にお邪魔した。
そして、意外なことにそいつはちゃんと有言実行
を果たし、私に一切手を出すことなく一夜を過ごした。
イチャイチャ類も一切なく、
おとなしく映画を見て、感想を言い合い、
静かに眠り、朝を迎えた。
私はそれまでそいつをなめていたが、
その最初のデートで少し考えを改めた。
意外と家がぼろいこと、
ちゃんと有言実行できることは私に
良いほうのギャップを与えた。
2回目、3回目も会ってみようかな、
という気持ちになっていた。
私と彼の距離が縮まったころには、
季節はすっかり冬で、
もうすぐクリスマスがやってくる頃になっていた。
クリスマスの悟り
私はクリスマスにベタなデートをしたことがなかった。
イルミネーションを見に行ったり、
ツリーを飾り付けたり、
ケーキを食べたり、そういうものを
恋人と共にしたことがなかった。
クリスマスに一緒に過ごそうといわれた時、
素直にうれしかった。
あんまり普通の幸せがわかんないけど、
なんだか普通の幸せが待っていそうな
気がする…!と期待した。
クリスマス当日、渋谷で待ち合わせをして、
イルミネーションを見に行く途中、
あんまり笑わない彼に気付いた。
「どうしたの?体調悪い?」
と聞いたが、「いや、大丈夫」と答えたので、
強がってなさそうだし大丈夫か!
と思い、イルミネーションを見に行った。
正直人が多すぎて、私は若干辟易していた。
花火やお祭りなら混雑も平気なのに、
イルミネーションはだめなのが不思議である。
そして、これからどうしようか?という私に、
どこかお店に入りたいと彼は言い、
多分どこも混んでるからおうちでもいいよ?
という私を遮り、
いや、どこか入ろう、
と歩いて行った。
そう、なんと
鳥貴族に…!
え、ちょっとどこでも良さすぎないか…?
確かにチキンは食べられるけど、
チキンは串刺しになっていて、
炭焼きの香りがするんだぞ…?!
そしてグラスはジョッキなんだぞ…?
ツッコミは喉の奥深くに消えていった。
ビールで乾杯して一口飲んだ瞬間、
彼はその日初めて幸せそうな顔をした。
そして、いそいそとカバンから何かを取り出した。
「これ、大したものじゃないけど」
と言って取り出したのは、
シャネルの小さい袋だった。
中には、口紅が入っていた。
私は素敵でお高いプレゼントと、
この大衆まっしぐらの鳥貴族の
空間のギャップに一瞬混乱した。
そして、あることに気付いた。
私、この人のこと、
全然好きじゃない…!
鳥貴族に連れてくるような男はいらない、
と言えるぐらいお高い女だったらよかったのだが、
そうじゃなかった。
私は元々どんな底辺なシチュエーションも
楽しんでしまう女である。
そう、心から好きな男となら…!
昔、ハーレムで出会ったお金がない男の子と
朝ジャージでおにぎりを買いに行って、
ガードレールに二人で腰掛けて
ゲラゲラ笑いながら食べたとき、
死ぬほど楽しかったことをなぜか思い出した。
今日一日、待ち合わせてから
イルミネーションを見て乾杯するまで
ずっと、彼は私が楽しむことをやってくれて
いるようで、
実は「女子が好きそうなことをこなす」
という修学旅行1日目感が否めなかった。
しかも、私どころか、
彼自身が本当に楽しんでいるわけじゃない
だろうことに、彼自身が気付いていなかった。
私が女子が好きなものが本当に好きで、
高い店に連れていかれたら喜んで、
高いプレゼントをもらったら喜んで、
そんなちゃんと底が見える、
わかりやすくて扱いやすい女
だったらよかったのだが。
私が本当に何が好きか、
何をされてうれしいか、
何が悲しいのか。
彼は全然知らない。
それは問題ないんだけど、
「知る気がない」ということが
大問題だった。
今まで浅い人間やクズな人間はいっぱい見てきた。
能力のあるクズも沢山見てきた。
知らないうちに、そういう奴らを
「浅い奴はちゃんとクズ」という
勝手なパターンで決めつけてきたからなのか、
気付かなかった。
「クズじゃないけど、浅くて能力がある」
「よくよく見ると人の気持ちがわかってない」
というタイプの人間に。
彼は「恋人らしいことをする」
「クリスマスで予約取れなかったけど、
どこかお店でプレゼントを渡す」
というタスクは立派にこなしていた。
でも、正直人込みがうざすぎて楽しめない、
どこでもいいから店じゃなくて、
むしろ家でゆっくりしたいと思っている
私の愛想笑いには全然気づかなかった。
私は思わず
「ありがとう。これでお互い
クリスマス一人じゃなくなったね」
と言ってしまった。
彼は全く気付かなかった。
そして
「うん。よかった!」
と答えた。
クリスマスに一人っきりじゃない
という既成事実ができてほっとしているようだった。
そう、幸か不幸か、
彼も私のことなんて
全然好きじゃなかったのである。
クリスマスに一人でいるのは
みじめだから、何でもいいから誰かと
一緒にいたい…??
そんな薄っぺらい時間を重ねることのほうが
よっぽどみじめだと、あなたは気付かないの…?
不思議だったのはその”いびつさ”だった。
誰でもいいなら、わざわざ恋人らしいことなんて
する必要も、プレゼントもいらない。
外に出る必要もない。
努力する必要はないのである。
だって、別に私のこと大して好きじゃないんだから。笑
でも、なぜか中途半端に努力してくれている。
自分でも好きじゃないことに気づいてない。
ザラザラと出てくる言葉を飲み込んで、
「口紅つけてみるね」
と言い、トイレで彼にもらった口紅を
つけてみた。
一見なじみがいいようで、
イエベの私には絶妙に合わない色だった。
私は思わず笑ってしまった。
この状況そのものみたいじゃないか。
今日でこの人に会うのはもうやめよう。
多分お互い時間の無駄だ。
鳥貴族に連れてったら連絡が途絶えた、
人聞きの悪い女になっちゃうけど。笑
そう決意した。
彼は今でも元気かしら。知らんけど。
自分の心って思わぬタイミングでわかっちゃうよね。
無駄な時間は過ごさないようにしようと誓った、
という悲しいお話であった。
終わり!!