葉状腫瘍になった話④~いよいよ入院編

前回までのお話はこちら!

葉状腫瘍になった話①〜準備編

葉状腫瘍になった話②〜診察から検査行脚編

葉状腫瘍になった話③~再診から入院準備編

さて、前日のメールで内容も確認し終わり、

身内への具体的な日時の連絡も終わって

いよいよ入院当日の朝である。

おそらくこの先しばらく湯舟には浸かれないだろう

ことを考慮して、当日は朝風呂を心ゆくまでキメた。

(これはマジで入院前の全ての方に言いたいのだが

1回身体を切ると、1ヶ月ぐらいは風呂に入れない。

傷口から雑菌が入るのを防がないといけないためだ。

想定よりもだいぶ長いことを覚悟しておいてほしい。

傷口がちゃんとくっついたのが確認できたら

やっと一番風呂だけちょこっと入れるようになる。

基本ずっとシャワーで、温泉とか銭湯とか

サウナとかは長い期間お預けである)

ここぞという時のためのバスソルトなどは

本来デート前夜ではなくてこういう時の

ためにあるよななどと思いつつ、

風呂から上がっても病院では化粧ができないことを

考慮して、せめて髪だけでも可愛くしていこうや自分…

と髪を巻くという一見無意味で情けない抵抗をしたが、

これは意外にも功を奏した。


腫瘍の切除だけとはいえ一応私も病気ではあるのだが、

病院に入院しに行くという行為はまるで、

より深い”病気”というでかい業界の深淵に

潜り込んで行くような感覚なのである。


しかも周りはガンなどの私よりよっぽど

命に関わる深刻な病状の猛者どもである。


地獄でもバイブス上げてこー!!!

というギャルマインドはあっさり崩れる。

周りの戦闘力が違いすぎる。

向こうは命をBETしている。

なのでこういうのは形から入るのが効くのである。

周りは地獄だが私の髪はかわいいから大丈夫、

というなけなしの自尊心を、初日に鏡を見るたび

巻いた毛先程度でちょっとでも

思い出せるなら安いもんである。

というのも、基本的に入院中は

メイクもできないしネイルもできない。

カラコンなんてもってのほかだし

手術の時には眼鏡もボッシュートである。

顔色一つ取っても変化を見逃さない医療の心意気、

血中酸素濃度を正確に測ってくれようとする

その心意気ありがとう!くそったれ!と思いながらも

何年もつけ続けていたジェルは数日前から全オフし、

当日朝は日焼け止めだけ塗りたくり、

眼鏡をビカビカにみがき、眉毛だけ書かせて…

と顔を整えてもなお足りない可愛さを

せめてもの埋めるための髪巻きであった。

ちなみに、入院にあたって、

めちゃくちゃ手続きは煩雑なんだろうな…

と思ったが、当日は意外とすんなりだった。

この前まで話題だった高額医療費制度であるが

これの申請のための手続きを色々と調べ、

住民票などの書類も用意していたのだが、

私が入院した病院ではこの煩雑な申請を

全て向こうでやってくれるらしく、

説明を受けたときはたいそう拍子抜けするとともに

(神かよ…)というありがたさも湧き上がってきた。

1か月内に支払う金額が一定以上にならないように

制度を利用して病院が調整してくれるのである。

(月をまたいで高額になった場合とかは

各月で限度額内までは払わないかんので、

入院の日程や通院の日程は意外と重要である)

※ちなみに高額医療費制度は

「医療費控除」とは直接の関係がない。

高額医療費制度はあくまで協会けんぽが管轄、

医療費控除は自分が毎年払う税金を調整する

税金の控除の1種類に過ぎないので、

管轄を挙げるなら税務署ということになろうか。

税金は自分が支払った金額や控除を受けた金額で

変わるので、高額医療費制度を利用した後、

確定申告や年末調整時に記録書類を

取っておく必要はある。

私も入院するまでごっちゃだったので、

支払時この絡みがないというのは非常に意外だった。

こういう制度とかいうものは、基本的に後から控除や

補助が下りるとしても、今目の前の請求に対して

手持ちがないとどうにもならんというところがある。

ふるさと納税とかもある面そうかもしれない。

手持ちで余剰金があるから回せるのである。

普通のビンボー人にとっては、

 ”後で50万補助下りるけど

 今この場で60万払わなあかん”

という時、みんな困っちゃうよねーという穴を

カバーしてくれるとてもありがたいもんなのである。

貯金はしといたほうがいい、

と大学生の時の自分に言ってやりたい。

話がずれたが、病院までの移動は、

長期の人はもちろんキャリーを

コロコロしていくのだが、私は大きい荷物を持って

電車に乗るのがめちゃくちゃ嫌だったので、

(来院時間が朝のラッシュなどと被る可能性もあり)

ミニマムを意識して圧縮できるものはすべて

圧縮した(重さは出るが)、がドケチ根性で

ティッシュなんて買わなくても

パックのやつ1個持ってったらいいわ!

というそういうのがカサ増しの一端を担っていたので

皆さんは「現地で買えるものは全て現地調達」

これをスローガンとして入院していただきたい。

さて、病院に到着し、

専用受付で入院の手続きを済ませ、

病棟に移動してまず担当の看護師の方から

自分のベッドや病室への案内、

院内の使い方の説明を受けた。

私の病室はフロアの一番奥にあった。

構造としては細長い廊下を挟んで

病室が左右に広がっている

皆さんおなじみのスタイルであったが、

トイレがあるのはだいたいどちらかのサイドのみ、

シャワー室などは中間地点部分にあり、

ナースステーション近辺は個室や恐らく

深刻な病状の方のための病床があるようであった。

ちなみにフロアは病気によって

分かれている訳ではなく、呼吸器の人たち、

胃や肝腎や乳腺の人たちも色々いるみたいだった。

性別は部屋でしっかり分けられていた。

4人部屋が8〜9部屋、あとは個室と

ミーティングルーム、介助室?などであった。

(ICUとかの生死をかけている人たちはもう

〇階みたいにフロアで分かれているらしい)

同じ病室の人に挨拶して回った方がいいのかな…

と思ったが、全然そんなことはなく、

みんな基本カーテンを閉めてプライベート空間を

保っていたので、長ーい入院じゃない人は

そんなに気を使う必要はなさそうだった。

(私は入口側のベッドだったので、

よくカーテンを開けっぱなしにしていて、

たまたまお隣の方が通るときにばっちり目が合って

こんにちはーって挨拶して、その時に軽く

互いに自己紹介した。ちょっと嬉しかった。

でもこういうのが苦手な人も多いと思うので、

人恋しい人はかなり様子を見ながらがいいかも)

後でわかったのだが、私の病室は70代の方、

50代の方お2人とあと私で、

私のような簡単な手術の方も

抗がん剤の治療をされている方もいた。

(毎回食事やらなんやらのたびにフルネームを

 言わされ、ついでに生年月日も言わされるので

 カーテン越しにわかるのである)

初日は手術準備のための日なので、

寝床を整えて自分仕様に物の位置などを動かし、

基本的に血液検査や食事後の返却方法の確認、

朝は血圧や体重を測って…云々の

ほぼほぼチュートリアルだった。

あとは、毎日飲んでいる薬と今回使用する薬って

かぶってOK?等の薬剤師の方からの最後の確認、

担当の看護師さんがこれからの大まかな流れを解説、

夜になって、最後に恐らく外来の診療がようやく

終了したであろう私の担当医師が、

「藤原さ~ん…?調子どうですか…?」と術前の

最終チェックをしに私の病室まで来るという、

割と盛り沢山なスケジュールだった。

※ちなみに、主治医と担当の看護師さん以外に

レジデントになりたてとかインターンの医師が

何回も診察という名の見るだけのお勉強をしにくる。

(男性率高め)特にプライベートな部位なので、

出来れば特定少数にしか体を見せたくないし、

傷跡ならなおさらそうだ。まあ医学の発展のためだ!

しょうがないよね…と思っていたのだが、

彼らはまだ専門の科の選択これからなのか?と

思うぐらいに当たりが軽かった。

(勉強するならちゃんとしっかり診なよ…

 中途半端に女体に気を使って

 一瞬術部チラ見して、大丈夫ですねーつって

 ボタンだけとめるの手伝われても…)と思った。

あとは女性のレジデント?で

がっつりヴァンクリのアルハンブラの

ネックレスを付けている方がいて、

(いやあ…美容整形だったらめちゃ

 いいんだけどなあ…なんかモヤるなあ)

と思った記憶がある。

男性医師が高級腕時計とか

して内診しに来ても多分同じように思う気がする。

別に何もおしゃれもできない患者と同じ土俵に立て

というわけではないのだが、

外科医って汚れるよね…?急に病変した患者さんに

体液ぶちまけられたらどうすんの?

それつけててヨゴレの対処できるの…?

その想定がない医者って…と考えたのかもしれん。

ただのネックレスならそう思ったか…?

ブランドで高級品だからか?とか

なんかアクセサリーごときで、

とかいろいろ自分に思ったりもしたが、

この患者心理は普段の自分の健康状態では

おそらく想像もし得なかったかと思う。

で、いよいよ手術イブの夜である。

寝れるかなあ…と心配しつつベッドに横になり、

消灯したあともちょこちょこと携帯はいじっていたが、

環境音が非常に面白かった。

もちろん病院ならではのナースコールの呼び出し音や、

点滴の管がピピピピとなる音、

何かの機械なのだろうけど、定期的にぴっ…ぴっ…

となり続けている音のほかに、人の気配もあり、

私は修学旅行のみんなで寝るあの感じを思い出した。

大人になってからのプライベートゾーンのこの感覚は

漫喫のあの隣のおじさんのいびきが

聞こえてくる感じとすごく似ていた。

私は目を閉じながら、

(はす向かいのNさんマジで寝つき良すぎるだろ…

 さっきカーテンシャッ!してからものの3分で

 もういびきかいてるよ…すごい…)とか思ったり、

15分に1回はちょっと遠くの病室の

多分呼吸器系の疾患のジジイの

「オエエエッ‼︎(実際はゴヴェエエエ!的な音)」と

「カアアーーーッ!!ペッ!‼︎」

というあの音が聞こえて、

20回に1回ぐらいマジで面白い嗚咽があって、

みんな生きるか死ぬかのガチ病気で

大変不謹慎とはわかっているのだけど

みんな寝てる中で笑いを

我慢するのが大変だったりとか、

そんな状況を楽しんでいたら、

いつのまにか眠っていた。

次回に続く!

葉状腫瘍になった話⑤~手術本番編

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