葉状腫瘍になった話⑤~手術本番編

前回までのお話はこちら!

葉状腫瘍になった話①〜準備編

葉状腫瘍になった話②〜診察から検査行脚編

葉状腫瘍になった話③~再診から入院準備編

葉状腫瘍になった話④~いよいよ入院編

さて、なんだかんだ眠れた私だが、

手術当日、6:30ごろには目が覚めた。

朝ご飯を食べ、体重と血圧をナースステーションまで

セルフで測りに行き、食事後の検温の時に

看護師さんがこの後の流れを説明してくれ、

手術着を用意してくれた。

安いビジホのあのガウンの感じで、下は紙パンツである。

8時過ぎ、病棟の看護師さんとは別の、

手術までの水先案内人的看護師さんが来てくれる。

手術着に着替えて、手術用ポンチョを着せてもらい、

頭にどでかい手術用帽子をかぶる。

(米寿の祝いのシャワーキャップみたいなやつ↑)

このスーパー銭湯の妖怪のような姿で

時間になったら連れて行かれるのだが、

今まで移動していたエレベーターではなく、

フロア奥の秘められた場所へ導かれる。

職員による、ピッとやるのが必須の

関係者専用のエレベーターまで誘導されるのである。

そしてエレベーターゾーンに入ると

あれまあ何とみーんな同じかっこである!

同じように米寿の手術着を着た妖怪たちが

各フロア行きの水先案内人に導かれ、

ちょっとしたメンインブラックのようであった。

(ウィルスミスが初めてMIBビルの中に入ったら

宇宙人だらけで目をパチクリさせてた

あのシーンわかるだろうか、私もほんと

あんな感じだった、キョロキョロしまくっていた)

手術室までの道のりはめちゃくちゃ楽しくて、

私は朝イチの手術だったので、

手術受付で名前などを確認して

どの手術室かの指示を受ける列に

看護師さんと一緒に並んだ、

「ディズニーみたいですねぇ!」

と私はめちゃくちゃ盛り上がっていたが、

並んでいるのは基本的にじじばばメインなので

(シルバーディズニー…?三途のクルーズ…、

いや一周まわって普通に花やしきか?)

とちょっとだけ思った。

リストにある名前をしっかり確認されて、

次に案内されたのは、

映画館のスクリーン1〜9みたいな、

あんな感じの指示版がかかっている空間で、

通路を眺めると、壮観だなあ…本当に映画館みたい

と思いつつ、私の手術室シアターの前に着き、

入り口手前にある椅子に座らされ、

ここでヘアゴムやメガネなどをボッシュートされ、

手術前の最終確認がある。

シアター内から麻酔科の担当の方や

主治医の先生が

「藤原さんおはようございますー」と出てくるのだが、

私はもうメガネをとってしまっており、

この時点で私の視力は半分くらいになっているので、

最初先生に呼びかけられた時に

「だあれ…?」と言ってしまった。

「〇〇ですよ藤原さん!」と言われたが、

先生も医者用のオペ米寿を被っているので

米寿同士で、なんだあんたかばあさん、

じいさんそっちこそ、のくだりをやった。

そしてついに手術台へ!

(ちなみに靴下は履いたまま上がったけど

手術から戻ってきたら脱がされていて、

靴と一緒に帰ってきたよ)

手術着をほどいたり、

シートを敷くのに腰を浮かせて

スタッフのみなさんへの協力タイムを経て、

手の甲にぶっとい針を刺され、

色々な機器を装着される

(ちなみにこの時手の甲に刺された針は

この後入院中点滴を打つのに

ずっと刺さりっぱなしなので、

痛いのが苦手な人は麻酔科の担当さんに

痛がりで…って言って丁寧に

やってもらった方がいいかも。

私はこの時の当たりがわりと良くなくて

術後に点滴の機械を何回も

ピーピー鳴らすハメになった)

酸素マスクを口にカポっと被せられ、

ここで徐々に麻酔が吸入されていくので、

見たい景色はできるだけここまでで

周りをキョロキョロして半分の視力で目に焼き付けた。

とんでもなくでけえモニターや、

どう見てもR2D2の進化版みたいな機械

(あとで聞いたけどあれはダヴィンチではないらしい)

哺乳瓶のニップルみたいなのがついているまあるい照明、

めちゃくちゃ広い手術室、うわあ…と思いながら

先生たちと「酒弱いんですぐかかると思います…」

とか話していたら徐々に酩酊状態になり、感覚としては

テキーラのショット5杯+カクテル2杯飲んだ後

1時間ぐらいの、(歩くのは無理だな…

ふらふらする…どっかに座らんと…)という

自制心がちょうど仕事し始めるあの状態が

体感20秒ほどで訪れ、そして目を閉じて、

次の瞬間目を開けたらもう手術が終わっていた。

ちなみに今はみんな万博でみんな盛り上がってるけど

私的には手術室よあんたが1番のパビリオンだよ

と思ったぐらいかっこよかった。

国内外問わず、今まで見てきた

どんな医療ドラマよりも機器が充実していた、

素人目にもわかるぐらいにである。

(おそらく私が入院していた病院が

都内でもかなり資金が潤沢なところなので、

日本で1、2を争える設備だろうと思う、

後で聞いたらリニューアル改装した後なので

そう見えるだけで、昔はクソ古かったんですよー

と担当医に言われたけど)

私は花粉症で鼻が詰まっていたので、

口の挿管を抜くまで息ができず、

目覚めて先生たちに声をかけられた瞬間から

(フガ…フガ!!息できん…死ぬ…!)と思い、

もういっそ…!と息を止めたら

うまくいって口から呼吸ができるようになった。なぜ。

目覚めた時が1番修羅場だった。

「藤原さーん手術無事終わりましたよー!!」

とデカめの声で言われ、(はいはいありがとねぃ〜)

というジジイのような気持ちだけを持ち、

(声は調子悪い時の中森明菜ぐらいしか出なかった)

胸にはベリベリのついたさらしみたいなのが巻かれ、

ベッドに乗せられたままカラカラと病棟まで運ばれ、

ここから3時間耐久尿意との戦いが始まるのである。

身体のだるさなどはインフル1日目のあの感じである。

これから本チャンがくるぞという気配を持ったあの熱っぽさ。

術後最初は15分ごと、次は30分ごとみたいに

アラームみたいに看護師さんが様子を見に来てくれる。

しばらくは身体を起こすの禁止である。

2時間までは普通に尿意も我慢できたのだが、

2時間半まではいかない頃に流石に無理…となり、

排尿介助してもらったのだが、マジで上澄みしか出ず、

(クソっ!!だから私は

バカリズムには及ばないんだ…!!)

とバカリズムがかつてすべらない話で

自宅でおもらししたら…というエピソードを

延々と脳内リピートしていた。

看護師さんの半分ぐらいはまだ20代で

自分より年下だったのだが、自分が介護されると

こういう風に年下の人たちと上手くコミュニケーション

取らないとスムーズにいかんなあと痛感した。

目指せぽっくりとはいえ今から練習が必要である。

出ない尿を出して45分ぐらい我慢して、

やっと起き上がってもOKの許可が出、

ここでパジャマに着替えさせてもらい、

点滴を繋ぎ直して、立ち上がって血流が

変わった瞬間にここで初めて、

(胸…!!痛え…!)と強く感じた。

みんなが一度は感じたことがある、

包丁で指を切ってしまった時のあの痛み、

真新しいコピー用紙で指をいっちまった時の

あの切り傷の痛み、それが真皮まで

いっちまったverのえげつない切り傷の痛みの奥に、

「さっきちょっとシモヘイヘに狙撃されまして…」

みたいな内臓を突き刺すような痛みが走る。

骨折とかの内部の痛みや、生理痛で気絶するような

あの神経圧迫の痛みとは違う趣きがある。

痛みとはかくも違いて趣きあるかな、おりょうブログ、

などと一句詠みつつ、管をつないだままおしっこ完了である。

おしっこが完了してからは点滴祭りが開催され、

痛みの程度で薬を調整される。

ご飯は夜までお預けである。

なんか自分の体にえらいことが起こったらしいというのが

何となく自分の体調でわかって面白かったり、

いやーあんまり熱は出んでいいでなど言い聞かせたり、

横になりながらぼーっと何かしらを考えていた気がする。

この辺はあんまり記憶がない。ただこのあたりから

風呂入りたい欲が出てきたのは覚えている。

夜ごはんは食べられるので、

夕食を食べ、そのあと先生が傷のチェックに来て、

この日は若干の熱でふわふわした感覚で

眠りについた。

次回に続く!

葉状腫瘍になった話⑥~術後編

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