平屋の宿命
私の物心がついてから、
小学校に上がる直前の3~5歳くらいまで、
私たち家族は某日本で一番マイナーな県の
西側にある町で生活していた。
その当時は木造の平屋建ての家で、
クモ、ナメクジ、ネズミ、
たまにムカデがでてビビりながらも、
スリリングなライフを送っていた。
家から歩いて五分程度のところに、
大きめの公園があった。
よく父と一緒に遊びに出かけていた。
緩やかな坂をのぼっていく途中に、
坂の右サイドに道に沿って側溝がある。
そこによくドングリが落ちていた。
DEATHさんぽ
ある曇りの休日、
父と一緒にドングリを拾いながら坂をのぼっていた。
ふと見ると、溝の中で白くてぬめりのある、
丸い生き物らしきものがいる。
「これなにー?」と父に聞くと、
「さわってみ?」と言う。
触ってみると、思ったよりもヌメヌメしていている。
そこで「それ、ナメクジだで!」
とニヤニヤしながら言う父、
「ぎゃああー!!!」
と悲鳴をあげて私は後ろに跳びのき、
のけぞった後、「ううう……」としゃがんだ。
すると、着ていたパーカーのフードから
何かがコロコロと落ちてくる。
なんだこれ?!ドングリだ!!
「わあ!!!」とびっくりして
大量の「???」が浮かぶ私、
父は「あはははははは!」と笑っている。
そう、父は坂をのぼりながらドングリを拾っては、
後ろから私のパーカーのフード
にこっそり入れていたのだ。
子供の感覚というものは本当に不思議なもので、
ナメクジだとわかった瞬間に
体がびっくりするかと思えば、
少しずつ重くなっていたフードには気づかなかったり、
鋭いのか鈍いのかよくわからんものであるが、
その時にはっきりと「呆然」としたのを覚えている。
あれは人生で初めての「呆然」であった。
また、父め、許さん、と思ったのも覚えている。
そんなちびっこの頃の話。
おわり!